わたしの行きつけの床屋さんに行ったときに店長から聞いた話です。30代の店長がおひとりで経営しています。散髪料は5,000円近くするので、安価のカットだけの理髪店とは違います。昔ながらの、髭剃り、マッサージもしてくれます。
そこは予約のみですが、ここところ、週末の予約が金曜日には埋まってしまうので、最近は忙しいのか聞いてみました。すると、徐々にお客が増えているとのことでした。ホームページやSNSで集客しているのかと聞くと、それはしてはいませんとのこと。
ではどこから新規の客が来るのかというと、周りの同業が徐々に廃業しているために、その人たちが流れてくるとのことでした。隣のターミナル駅の格安の床屋でなく、以前と同等のサービスを求めて探して来るようです。
男性の場合、理髪店または美容院で散髪をしてもらうことになると思います。理髪店の場合、カットは高齢の理容師の方が多いように思えます。一方、美容院は若い美容師のかたがカットをしてくれます。理髪店と美容院の違いは、顔を剃れるかどうかの違いがあります。店長にどうして理容師になったのか聞いてみると、もともと親戚に理容師の人がいて身近だったようです、専門学校でコースを選択するときに理容科は30人、美容科は300人の募集でした。将来独立のことを考えると、理髪店で散髪をする人は一定数いるので、理容師の方が競争相手が少ないだろうということで理容科を専攻したとのことでした。当時はカリスマ美容師などがブームでしたので美容師の方が人気があり、理容師は衰退産業だといわれていました。
そして20年後、美容室は過当競争となっています。駅前でも美容室は沢山目につきます。一方、理髪店は経営者が高齢のため、廃業する店舗が増えています。クイックバーバーなどの格安料金の新業態に押されて後継者もおらず廃業の選択をする方が多いようです。 【理容室 平成元年 14万件⇒令和3年 11万件 :美容室 平成元年 19万件⇒ 令和3年26万件】
店長の話では、専門学校の理容科の同期の人たちは比較的調子が良いらしいです。廃業の恩恵を受けて顧客が増えている。また、最近の外国人のアーティストの影響で、剃り上げて欲しいと希望される若いかたも多くなったようです。美容室は剃刀が使えませんので、こういうユーザーも理髪店に来るようです。
20年前は衰退産業といわれていた産業も、競合がいなくなるとそこに残ったひとが恩恵にあずかれるということでした。投資の格言で「人の行く裏に道あり花の山」というのがありますが、まさにこれはその事例ですね。